詩集 「ほほえみ」    詩 さたけ まさこ




  「 春  風 」  

二才になろうとしている姪が
わたしの手を取り
庭を歩く

いぬふぐり ハコベ
水仙 椿 つくし たんぽぽ
庭は春の贈り物で溢れ
彼女の手のぬくもりが
わたしの指に伝わってくる

風もあたたかい

彼女のやわらかな髪が風にゆれ
とことこと歩く姿が愛らしい

わたしは年をとった
あんなに近かった地面から遠くなり
空には近くなったけれども

少しさみしいが
ちょっぴりうれしいのだ
かわいい花を避けて歩ける
そんな自分が

今ならば
今ならばわたしにもと思う

  春風よ
   再びこの胸の中に






  「 夏の河原で 」



おまえの小さな足を包む
川のなめらかなせせらぎが
きらきらと光をはじく

石の上でお昼寝トンポ
小鳥も水浴びに来たよ

麦わら帽子
水玉のシャツに
赤い半ズボン
ひとつひとつが愛おしい

わたしが生まれてきた訳が
ここで遊んでいる
 



  「 おかえり お月さま 」 

  お前を抱いて
  外へ出る
  おかえり お月さま」
  お前が言う
  当たり前のように

  今夜はおぼろ月

  ところどころに
  星もいて
  闇夜もどこか
  嬉しげな

  秋の夜長のまんまるの
  お空におわす お月さま


     ほんとだね


      「おかえり お月さま」

 



「 冬のガラス窓 」

ブラインドを開けると
そこには真っ白なガラス窓がある

細く小さな指が
なめらかな線を生んでゆく

むかし見た
いわさきちひろの絵のように

無心に動く指に
新しい年の朝の光が
きらきらとぬくもりをつむぎはじめた



 



 詩 さたけ まさこ

CG制作:MICHIKO

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